残り70日で社会に放たれるホモサピエンスのはなし

社会に放たれるまで残り70日(1月23日時点).一度は本気で研究者を目指したホモサピエンスが,専門就職を捨てた理由とは...HR,Technologyなど異色の組み合わせでお送りします

【体験記】ある人曰く「宝くじ」?大学院生の奨学金事情

こんにちは、サピエンスです。

最近更新がなかなかできていませんでしたが、今日はかなり有益(?)なはなし。

 

 

大学院生の経済状況

 私は現在私立大学大学院の修士二年生です。大学院の学費は、年間100万円程度で、卒業までに合計200万円です。これに加えて、生活費(年間40万円)に家賃(年間12万円)となると、2年間(修士課程修了まで)で300万円は必要になります。私の場合、すべて自分で払っているので、さすがにアルバイトだけでは賄いきれません...。

 一方私の収入は、大学院内でしている教育アルバイトが年間50万円、その他アルバイトで年間70万円なので、あと180万円ぐらい足りません。そこで、利用しているのが、日本学生支援機構の第一種奨学金です。私は学部時代に有利子の奨学金も併用していたので、大学院まで有利子は借りることは気が引けました。ということで、無利子の一種のみ借りています。金額は選べますが、私は月88,000円(二年間で約200万円)を借りていました。

 

 大学院生の奨学金はある人曰く「宝くじ」

 そんなこんなで、奨学金を借り始めた私ですが、さすがに学部の奨学金と合わせて返済するのは大変です。そこで狙っていたのが、「特に優れた業績による返済免除制度」です。詳細は日本学生支援機構の公式サイトを見てください。

 

特に優れた業績と評価方法 - JASSO

 

 この制度は、学部生の奨学金にはありません。簡単に言うと、「研究頑張って業績残した大学院生の奨学金は免除してあげますよ」ってことです。学部生にこの制度がない(昔はあったと聞いたことがありますが)理由は、おそらく日本で大学進学が一般的になり、かつ貸与額が最高で800万円ぐらいになるので、返済免除してたら制度が成り立たなくなるからでしょうね。 

 この制度は、貸与期間が終わるときに大学院から連絡を受けてから申請します。そして、審査を受けて半額免除・全額免除が適用されます。全額免除を受けられれば、200万円の返還義務が免除されるので、見ようによっては200万円もらえるのと同義ですね。実際に利用している身としては、返還免除されたときには、既に手元にない(はず)のお金ですが。私の先輩には、この制度のことを「宝くじ」と呼んでいる人もいました。

 

具体的な申請方法

 ここから先は、大学院一年生や大学院進学を考えている学生向けの記事です。すでに大学院二年生になっている人は絶賛申請中だと思うので、知っていることばかりだと思います。また、私の経験談なので、大学院が違うと内容が一部異なる場合があるのでご了承ください。

 流れとしては、返還誓約書やリレー口座(返済用の銀行口座)の申請などが終わったぐらいに大学院内で掲示が出ます。ここを見逃しても大して困りはしませんが、申請期間などが記載されているはずなので確認しておきましょう。その後、修士論文の執筆・審査が始まるぐらいのタイミングで申請の詳細が、掲示もしくは学内ポータルサイトで連絡されます。院生としては忙しい時期なので、計画的に進めていく必要があります。具体的に必要な資料としては以下のものがあります。以降順番に説明していきます。

  • 返還免除申請書
  • 業績優秀者返還免除申請書
  • 業績一覧表
  • 指導教員等の推薦理由

返還免除申請書

 これは、本当にただの申請書です。記入には奨学生番号が必要です。複数借りていたり、奨学生カードがないと忘れてしまうので、注意しましょう。最悪、教えてもらうのも可能だったと思いますが、めんどくさいです。

業績優秀者返還免除申請書

 これもただの申請書ではありますが、大学院の研究概要や特に優れた業績の要旨など、文章で「私ってこんなに優れてますよ!」とアピールする必要があります。書く量も多くて大変なので、就活で書いたことある人はその文章をベースにして書くといいかもしれません。

業績一覧表

 これが本当にバケモノです笑 修士論文執筆期間中にやると地獄を見るので、計画的に進めましょう。具体的に何かというと、研究発表(学会発表や論文投稿)の業績を一覧にして書き起こします。この時、共著者の名前や各発表名、学会の正式名称、開催日などを詳細に書きます。証拠書類も付録として提出するので、論文の原本や発表のアブストラクトなどをまとめて保存しておくことを強くお勧めします。

 ここで特に重要なことなのですが、何を評価するか・業績としてみなすか、は各大学、各分野によって大きく異なります。例えば、電気・電子、物理、化学・生命など学部ではなく分野で大別されるので注意してください。できることなら、先輩に申請書類を残してもらって、評価項目を確認したうえで業績を稼いでください。

 そして、裏技というか裏話というか...ですが、大学の窓口に行っても詳細なことは教えてくれません。「例えば...は評価されますか?」と聞いても、評価するのは窓口の人ではなく、教授陣です。とはいえ教授陣に聞いてもよほどの重鎮でなければ、詳細を教えてくれるとも思いませんし、知らない教授もいるでしょう。なので、毎年一回開示される情報を入手しておく必要があります。効率的に業績を稼ぎましょう。また、ネットでは、院生一年と院生二年で点数が別々にあって、上限があるといった記述も見受けられますが、私の申請の場合そんなことはありませんでした。いくらでも書けます。なのでセーブすることなく荒稼ぎしてください。加えて、「その他特に優れた業績」という欄があればボーナスポイント獲得のチャンスです。「海外で研究した」「...学会の運営に携わっていた」など何でも書いてください。そのさいに、教授や実行委員会の方などに一筆書いていただければ無敵です。

指導教員等の推薦理由

 日本学生支援機構でありがちな教授からのコメントです。日常的に教授と良好な関係を築いておきましょう。教授の文章能力にかかっています!

 

おわりに

 日本学生支援機構奨学金を借りている身でいうのは何ですが、私は、この奨学金制度は日本の研究業界のガンだと思っています。確かになければ困るのですが、修士学生として最も大変かつ頑張るべき修士論文執筆期間にこの申請期間を被せてくるのはどうなんでしょうか。また、奨学金を借りる際に、こうした免除制度を詳細に教えてモチベーションを上げさせればいいのではないでしょうか。現状のままだとただの金貸しと何が違うのでしょうか...。海外の大学院や研究機関では、学生の学費を肩代わりしているケースもあります。日本の大学院は、経済的な理由で断念する人も多いように感じます。経済的不安を抱えた状態で研究活動に励んだ結果、大してその能力が生かせない会社に入社して...という未来を選びたい人は何人いるのでしょうか...。

 いつかこの辺の話も記事にしたいと思います。とにかく、一人でも多くの学生がこの記事などを見て返済免除をゲットできるように願っています。研究を頑張る人が報われる世の中になってほしいです。それでは、ここまで読んでくださった方ありがとうございます。